血液浄化療法について | 特定医療法人 同心会 遠山病院

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疾病と治療について

血液浄化療法について遠山病院 内科 西村 広行

はじめに

血液浄化療法という言葉は聞きなれないかもしれませんが、その代表であり中心を占めている血液透析に関しては、御存知な方も多いと思います。読んで字の如く、血液を浄化する(きれいにする)事、つまり体の中に生じた老廃物や代謝産物などを血液中から取り除き、体のバランスを保つことである種の病態(病気)を改善させ、生命を維持する治療法とでも定義できます。血液維持透析療法を受けておられる方は、現在20万人を超えています。当院でも約200名の患者さんがみえます。透析療法における技術進歩はめざましく、各種の変法も病態に応じて可能となってきました。

その技術の発展とともに進歩してきた各種の血液浄化療法について簡単にご紹介させていただきます。

どのようなものがあるのでしょうか

まず分類として、慢性血液浄化療法と急性血液浄化療法に分かれます。

慢性血液浄化療法:
慢性腎不全の方が受けておられる血液
維持透析が大部分であり、週3回、1回あたり4時間実施が標準的です。
急性血液浄化療法:
急性腎不全に対する血液透析も含みますが、救急領域や集中治療領域においては人工呼吸器、人工心肺等とともに、人工臓器的な補助治療として、今や日常的に行われています。
急性血液浄化療法は、その方法により大きく3つに分かれます。
・血液透析の変法として
持続的に長時間ゆっくりと行う事で、体に負担がかかりにくく、循環動態(血圧)が安定します。また、血液濾過という浄化法を併用することが多くなります。
適応:多臓器不全、重症急性膵炎など
・血漿交換
血液は血球成分と血漿成分から成ります。
病気の原因物質はほとんどが、血漿中に存在するため、血液を血球成分と血漿成分の2つに分離して血漿成分を新しい物と入れ替えます。1978年に血漿分離膜が開発され普及した方法です。
適応:急性肝不全、劇症肝炎など
・血漿吸着
血液をある種の(病気により異なる)吸着筒に灌流させて(通して)、病気の原因物質を吸着させる方法です。血球成分と血漿成分に分けてから行う場合と、血液をそのまま灌流させる場合があります。
適応:薬物中毒、敗血症性ショックなど多数あり

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こんな病気で実施しています(当院実施例)(血液維持透析を除く)

慢性疾患

・家族性高コレステロール血症
50代男性、内服だけではコレステロールのコントロールができません。急性心筋梗塞を起こしたこともあり、悪玉コレステロール(LDL)吸着療法を月に一度行い、現在安定中。
・閉塞性動脈硬化症(ASO)
ASOは、足の血流が悪くなる病気です。 60代男性、糖尿病とASOのため左足小指の壊疽(腐ること)に至り切断。術後も病変が治らないため、難治性ASOに対する悪玉コレステロール(LDL)吸着療法を実施し(10回)完治。
・潰瘍性大腸炎(UC)
UCは、原因不明の腸の炎症です。20代男性、内服治療では症状コントロール(下痢、血便、腹痛)ができず、白血球除去法というある種の吸着療法を実施(5回)。効果は今ひとつで、手術となった。

急性疾患

・溶血性尿毒症症候群(HUS)
HUSは貧血、血小板減少、急性腎不全を来たす病気で、O-157感染で起こる場合が多いようです。30代、50代いずれも女性、O-157(大腸菌)感染により、急性腎不全に至る。前者には16回の血液透析、後者には6回の血液透析と、意識障害が生じたため血漿交換を1回おこなった。これらを含めた集中治療にていずれも完治された。
・重症急性膵炎
この病気は死亡率も高く、持続的血液濾過透析(CHDF)、持続的血液濾過(CHF)を集中治療の一つとして行う事がいわば定説になっています。30代女性、50代男性に対して、CHFを主にいずれも約2週間、24時間に渡り行いました。結果は、前者は軽快されましたが、後者は死亡されました。
・敗血症性ショック
敗血症とは血液中に細菌が入り込み、時にはショック(血圧の低下)に至る場合もあります。その原因物質(エンドトキシンがその一つ)を吸着させる事で、著しく改善する場合が多々みられます。当院でも腎孟腎炎、胆嚢炎などによる敗血症性ショックの数例に対してエンドトキシン吸着療法を行い、ドラマチックな成果が得られています。この治療は全国的によく行われており吸着療法の最たる代表です。70代女性、腎孟腎炎にてショックであり昇圧剤に反応せず。直ちにエンドトキシン吸着療法を実施(2時間)。開始1時間あたりから血圧の上昇がみられショックを脱した。
・急性薬物中毒
すべての薬物に適応があるわけではないのですが、全身状態の悪い場合には基本的に実施します。血液浄化法は臓器障害の有無により異なりますが、基本は吸着療法です。80歳女性、自殺企図にてある除草剤を100cc程飲んだとのことで来院。意識はもうろうとしていた。直ちに直接血液灌流による吸着療法を実施し一命を取りとめた。

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最後に

血液浄化療法(特に急性血液浄化療法)は、進歩の著しい分野ではありますが課題も多く残されている治療法です。コスト面でも、非常に高い治療であります。病態(病気)の性質上からでしょうか、その適応についてや実施の時期(タイミング)に関して確固とした基準はなく、各施設により模索されているのが現状のようであります。(もちろん指針作りの全国的な取り組みはありますが)当院でも上記例のように各種の治療を行い、一定の効果は得られていると思われます。

まだまだ発展途上の血液浄化療法ではありますが、より安全で、より効果的な治療を提供できるよう当院透析センターでは、今後も日々研鑚していくつもりでおります。血液浄化療法を直接実施するのは、臨床工学技士という特殊技術者です。臨床工学技士なくして血液浄化療法はできないのですが、当院には8名ものスタッフが常勤しており、非常に心強く思っています。一般の方々にはなじみの薄い治療法と思いますが、血液浄化療法に関して何かご相談がございましたら、当院透析センターにご連絡いただければ幸いです。

遠山病院だより 2003年22号より

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