ACP(advance care planning)という言葉を聞かれたことはありますか?
厚生労働省では、ACPの愛称を「人生会議」とし、もしもの時のため、自らが望む人生の最終段階における医療・ケアについて前もって考え、家族や周囲の信頼する人たち、医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことと説明しています。そして、11月30日を「人生会議の日」と定めています。
本邦において75歳以上の後期高齢者が急増する2025年問題はすでに現実で、今や少子化による急速な人口減少と高齢者人口がピークに達する2040年問題が議論されるように高齢化社会の真っ只中です。私たち誰もが歳をとり、最後を迎えます。自分の最後について、普段から話し合っておくことがとても大切で、ACPは自分らしく最後を迎える手助けになるのです。
2018年に厚生労働省から「人生の最終段階における医療に関する意識調査」の結果が発表されました。人生の最終段階における医療について考えたことがある割合が約6割に対して、実際に話し合ったことがある割合は4割、詳しく話し合っているのは3%に満たないという結果でした。話し合ったことがない理由に、半数以上の人が「話し合うきっかけがなかった」ことを挙げていました。また、元気なうちから縁起でもない話をしたくないという気持ちがあることも推察されます。
そこで、「縁起でもない話」を話すきっかけとして「もしバナゲーム」をご紹介します。「もしバナゲーム」とは、大切とわかっていながら、なんとなく避けて通っている「人生の最後にどう在りたいか」について、あなたと大切な誰かが始めるきっかけ作りとなるゲームです。詳しくは、iACPのwebサイトで知ることができます。
職員で「もしバナゲーム」を行いました。
感想です。
・人生会議のきっかけになる
・友達同士でワイワイ話しながら行うのが楽しそう
・自分の価値観に改めて気づいた
・患者さんのご家族が行うことで、患者さんの価値観を考えることにつながりそう
・他人の価値観と自分の価値観の違いにも気がつきそう
人生会議で話し合う内容ですが、決めることがゴールではなく、あらゆる状況下で意思が尊重できるように価値観を共有することが目標となります。例えば、もしも治らない病気などになり、気持ちを伝えられなくなってしまった場合に、どんな治療やケアを受けたいと考えますか?もしも自身で決めることができなくなった場合は、誰に代わりに決めて欲しいですか?もしも治らない病気などになった場合、どこでどんなふうに過ごしていたいですか?などが一例です。大切なことは、価値観を共有した話し合いのプロセスです。
遠山病院では、一階ロビーに人生会議コーナーを設置しており、パンフレットをご用意しています。ご自由にお持ちになっていただき、人生会議のことを考えるきっかかけとしていただけたらと思います。また医療者も患者様やご家族の皆様と共に考え、共に悩み、話し合いを繰り返す過程を大切にしたいと考えております。人生会議のことでご相談がありましたら、気軽にご相談ください。
日本臨床倫理学会 上級臨床倫理認定士 岡林由紀
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